日本建物保全株式会社
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外壁の塗装


60年度の日本塗装工業会の工事実績系統計では、新築工事高2063億円に対し塗替工事高が2315億円となり塗替工事が新築工事を追い抜いていることがわかる。
 今や集合住宅をはじめとして、建築メンテナンスのリフレッシュ塗装は、建築塗装工事の大きな分野を占めるようになってきた。これらの建築外壁を主体とするコンクリート、モルタル下地のリフレッシュ塗装はどのように計画され、実施すべきかについて考えてみたい。
1.現状の調査と診断
新築時には美しく仕上がっていた外壁も年月を経ると、汚れやチョーキングなどの表面的な塗膜の劣化が始まってくる。汚れだけであれば、塗膜の保護機能は保たれているわけであるが、光沢低下、チョーキングはやがて塗膜表面の微小なクラックへと進み、雨水の浸入を許し、塗膜のフクレ、剥離へとその劣化を拡大してゆく。
 塗膜の保護・防水の機能が低下するとコンクリートの躯体の中性化、鉄筋の腐食が促進され、錆の発生、進行は体積膨張により、コンクリートをバク裂させ、躯体表層の欠落、落下事故や、建物全体の強度低下を招くことになる。
 建物外壁の改修については、塗膜の状態だけでなく壁体や、シーリング材などの老化の程度を正しく把握し、それぞれに適した正しい処置を施さなくてはならない。また忘れてならないのは、いくら外壁の塗装を入念に行ったとしても、上部構造から雨水が浸入してくるようでは、塗膜の長期の寿命は期待できない。したがって外壁塗装計画にあたっては現状の塗膜の劣化度を調査、診断すると同時に、各部の防水性能についても充分にチェックし適切な処置を行わなくてはならない。
2.塗膜の劣化とメンテナンス周期
外壁塗膜の塗替周期は塗料の種類、立地条件などによって差はあるが、平均的には10年が一つの目安と考えられている。早い場合で7〜8年、おそらくとも10〜12年でメンテナンスを行うのが一般的である。塗装後10年を経過すると劣化の進み方が早くなり、塗替えに要する費用、とくににケレン、下地調整などの費用が割高となってくる。ただし、平均10年というのは今までの塗料を考えた場合の年数であるが、最近では例えば弗素塗料のような超耐候性能を持った常温感想塗料が出現し、もっと長く塗膜寿命を延長さすことが可能になりつつある。現在までに使用されている各種塗料のメンテナンスのリフレッシュ周期については第1表が一般的な平均年数と考えられる(リフレッシュ周期とは汚れを対象とした美化を含んでいる)。


3.防水工事と下地処理
塗替えに際しては予め屋上やベランダ、窓まわり、PC工法の建物では壁面目地などの漏水箇所をチェックし、防水工事を完全に実施する。建物外壁の巣穴や不陸、段違いなどは樹脂入りセメントモルタルで修復する。モルタルの浮き箇所は樹脂を注入し補強する。亀裂幅0.3mm以上のクラックはダイヤモンドカッターで溝状にカットし、コーキング材を注入補修する。鉄筋が露出している部分はエポキシ系塗料で防錆塗装を行い樹脂入りセメントで埋め込み処理をする。
4.高圧水洗浄
汚れやチョーキング層、劣化塗膜の除去には高圧水洗浄が効果的である。汚れ落しや、塗膜除去など目的によって水圧は50〜250kg/cm位まで機種により性能が異なるので適当な機種の選定が必要である。
5.外壁用塗料の選定基準
外壁用塗替塗料の選定基準としては以下の項目が考えられる。

(1)美粧機能=デザイン性、耐久性、耐汚染性

(2)保護機能=防水性、躯体保護、炭酸ガスバリヤー

(3)メンテナンス機能=次回塗替えの容易さ

(4)経済性=メンテナンスサイクル、コスト

これらの各項目を考慮して上掲の塗料リストの中から適切なものを選定しなくてはならない。

6.外壁用塗料の種類と特長
(1)ビニデラックスの外部用=耐候性のすぐれた外部用アクリルエマルション塗料

(2)カンペRP=リシン面塗替用の厚塗りエマルションリフレッシュペイント(公団指定品)

(3)カンペリシン=合成樹脂エマルション砂壁状薄付仕上塗材

(4)カンペタイルE=複層形吹付タイル。施工性が良く、耐候性にすぐれている

(5)カンペゴムタイル=複層形弾性塗料。伸び弾性にすぐれ、防水性、耐候性もすぐれている

(6)カンペゴムテックス=単層形弾性塗料。経済性、作業性にすぐれている。ローラー塗り工法

(7)カンペゴムライト=単層形弾性塗料。吹付工法用塗料で2色吹きもでき、施工性にすぐれている

7.その他の注意点
塗替塗装の場合は現状塗膜の状態によって適切なシーラーを選ばなくてはならないが、水系シーラーは剥離事故をおこしやすい。旧塗膜を弱めることなく浸透強化する溶剤形シーラーを用いるのが望ましい。




外壁のタイル張


コンクリート外壁の表面は、長期間外気にさらされ、雨水の影響を受け脆弱になっている。また、空気中の炭酸ガスに侵され表面から中性化が進みコンクリートの中の鉄筋を腐食させる。吹付け仕上げのされている場合でも汚水の付着、吹付け材の劣化などから5〜10年毎に再塗装を行う必要ある。これに対してタイル仕上げは、施工が良好であれば長期間メンテナンス不要であり、外観も高級である。またコンクリート躯体の保護にも最適であることからビル外壁もタイル張りに変更する例が多い。ここでは改修のポイントについて記す。
1.コンクリート躯体のチェックと処理
風化によってできた表面には、脆弱な層があり、吹付け材も長期の使用の後に改修されることから樹脂系、セメント系のいずれの吹付け材も表面が劣化し脆弱になっている。そのためタイルを接着させるタイル張付けモルタルが接着せず、タイル張りに際してはこれらの脆弱な層を除去することが必要となる。
 コンクリート躯体表面は、ディスクグラインダー、超高圧洗浄機、サンドブラスト等を用いて表面を削りとる。次にデッキブラシ等を用い、水洗いを充分に行う。吹付け仕上げの場合は、通常コンクリート躯体上へモルタル下地が拵えられているが、下地の躯体との接着の信頼性のチェックが必要である。これにはハンマーを用い、打撃音により浮きの有無を確認する。浮きのある場合は、下地を斫り、水洗い等の処置後下地を作り直す。さらに、下地モルタルを10cm角に躯体までダイヤモンドカッターで切りこみ、建研式接着強さ試験機で接着強さを測定するとよい。5kgf/平方センチメートル以下なら同様に下地を斫りタイル下地を作り直す。
2.下地精度と下地拵え、調整
下地精度をチェックしモルタルにて下地拵えをするかどうか検討する。コンクリート躯体の精度がプラスマイナス3mm/2m以下ならコンクリート躯体に直にタイル張りが可能である。これ以上なら平垣なモルタル下地(10〜20mm厚)を拵えたのちタイル張りを行う。ただし、吹付け仕上げの場合は、通常下地拵えがなされているため再度モルタル下地を拵えなくてはならない。コンクリート躯体へ、あるいは吹付け材を除去した後の下地調整として下記調合のモルタルを1〜2mm厚に塗布する。

・モルタル調合
セメント:砂1:0.5〜1(砂は2.5mm篩下) 混和剤は、液状混和剤(合成高分子エマルジョン)を使用する。液状混和剤は、多くの銘柄が市販されているが、使い易く、接着性の良いものを使用する。使用法はメーカーの指定による。タイル張りの工法と下地制度の関係を第1表に示す。

3.タイル張り
タイルの種類によって施工法が異なるが手張り改良工法が良い。

・小口平以上のタイル
 工法:改良圧着張り、改良積上げ張り、密着張り、モルタル調合は、一般の仕様に同じ。

・モザイクタイル
 工法:改良モザイク張り(KM工法)
 この場合は、目地直しを容易にするために液状混和剤混入モルタルを用いる。 なお吹付け仕上げが、コンクリートに直接行われている場合で、吹付け材除去後タイル張りを下地調整(液状混和剤混入モルタルの1〜2mm塗布)のみで行う場合は、張付けモルタルにも液状混和剤を混入し、コンクリート躯体へのタイル直張りと同様の仕様で行う。目地詰めは、従来と同様しっかり目地押さえを行い仕上げる。

4.乾式工法
ビル外壁の改装に当っては、躯体の表面層や吹付け仕上げ材を除去したうえでモルタルでタイル張り仕上げとする前述の湿式工法が一般的であるが、近年仕上げ材除去の場合の粉塵や、壁面洗浄後の廃水処理、モルタルによる周辺の汚れ等の問題があり、躯体、吹付け材の上から直にタイル施工が可能な乾式工法が要望されている。モルタルを使用しないため養生期間もいらず、改修には適切な工法である。

(1)タイル単体法(金具式)
タイル留付け金物をあらかじめ下地側につけて、その金具にタイルを留付けていく工法である(商品名:ハンギング、ブリックハンギング)。セルフセッティングの留付けであり、大面積の工事にも1個1個を確実に取り付けることができ、剥離、落下の心配がない。下地とは縁が切れているため、下地の動きによりハンギングが割れたり亀裂が入ったりする心配がない。施工後の白華現象がおきない、ハンギングは相欠りとなっているため雨水は下地側にはほとんど回らない等の特徴がある。

(2)アスロックタイルパネル
特殊形状の中空押出し成型セメント板(幅600×長さ4000mm以内)に工場であらかじめタイル張りしたタイルパネルであり、躯体側に留付け金物を取付け、その金物にゼットクリップを用いタイルパネルを留付けていくことで仕上げる。防水性の向上、タイルの亀裂、割れの防止、断熱性の向上、工期短縮、職種の減少などの特徴を持ち、ビル内の業務の障害にもならずに改装ができる。




アスファルト防水層


防水層を補修するのか、改修するのかの判断基準をどこにおいたら良いかを説明する。これは建物の構造や新築時の防水仕様、建物が建っている地域の気候や環境条件などにより異なるが、一般的には第1表を目安にするとよい。ただし、その建物に発生した不都合の程度によっては、防水層の耐久性からみて余命があっても全面改修を行った方が良い場合もある。
1.部分補修
漏水部位もしくは損傷を受けた部位に行う部分的な補修は、一般的には経年数が比較的短い防水層に対して行う。既存の防水層と同種類の材料を用いて補修を行う方が工事し易い。露出防水層に対する部分補修は比較的容易であるが、押え仕上げの屋上の部分補修は意外と手間がかかる。

 押え仕上げの屋上の部分補修は、
(A)補修部位の押え層を全面斫り、防水補修を行い、再び押え層を打設する方法と
(B)補修部位の周辺部のみ押え層を斫り、既存防水層と接続させる方法がある

ともに斫り工事が必要なので費用がかさむという欠点もある。そこで工事費をかけずに補修を行おうと、押え層の上から部分補修をしているのを時に見受けるが、これでは既存防水層と接続されないため、押え層の裏側から水が回ってしまい、無意味な補修となる。

2.露出防水の全面改修
防水の改修工事は、防水層の耐久性の限界がこないうちに行い、既存の防水層を生かしながら改修を行うのが大切なポイントである。

(1)既存防水層がアスファルト系の防水の場合
既存防水層がアスファルト系の場合は、下地活性剤<三星リベース>を既存防水層の上に塗布し、その上から改修用の防水層を施工する工法が注目をあびている。三星リベースは、既存防水層を活性化し、また水密性の高い連続皮膜が形成されるので、塗布後は透水もなく、ふくれ部分の補修も容易となり、さらに下地の不陸調整も同時に行えるので、工期の短縮も図れ、しかも常温で塗布するだけの材料なので火を使う必要もなく、常温工法のアスファルト防水による改修工事用としても最適な材料である。この三星リベースは、露出防水だけでなく、押え層のみ斫り、既存防水槽は残す場合にも適用できる。

(2)既存防水層が合成高分子系の防水の場合
既存防水層が合成高分子系のシート、塗膜防水層の場合、アスファルト系の防水材料での改修はむずかしいという意見もあるが、一方では本防水であるアスファルト防水で改修工事を行いたいという要望も強く、既存の高分子系の防水層を剥しアスファルト防水で改修を行っている例もあるが、既存防水層を剥すことはできるだけ避けた方が賢明である。そこで現在行われているのが、<三星ガムロン>の粘着性を利用して既存高分子系防水層と改修用アスファルト防水層をつなぐ工法である。
三星ガムロンは常温工法用の材料で、表面にコーティングしたゴム・アス層は独特のきわだった粘着性を持たせてあるので、既存の高分子系防水層とのつなぎ用材料として、アスファルト系材料の中では最も適しており、さらにルーフィングであるガムロンがそのまま第1層目となるのでムダもなく、さらに第2層目以降は、そのまま常温工法としても、また熱アスファルト工法でも施工が可能なため、改修防水仕様のバリエーションも多く、自由にに使い分けることができる。


3.押え仕上げの屋上の全面改修
(1)改修後も屋上を充分活用する場合
この場合は、まず既存の押え層を斫り、防水層を改修した後、再び押え層を打設する方法が一般的であるが、工事費用がかさみ、工期も長くなるので屋上を使用しない建物では、この工法はできるだけ避けたほうが良い。防水仕様では、新築時の仕様に準ずる。

(2)屋上の使用程度が低い場合
改修後も屋上は使用するが使用程度が低い場合は、許容荷重の範囲内で適度な保護層を設けることができれば、押え層は斫らず、その上から改修を行う。

(3)改修後は屋上を使用しない場合
この場合は、押え層を斫らずにその上から露出防水にして改修した方が良い。
 押え層を斫らずに改修工事を行う場合、問題となるのが押え層の中に残存している水分の影響によるフクレである。したがって、この水分を通気材の<三星ベーパス>などを用いて発散させることが重要なポイントで、通気材は改修防水層との納まりが良く、防水層と同程度以上の耐久性を持ち、さらに下地に確実に固定されるものを採用してほしい。
 通気工法に用いる改修防水仕様も、単に絶縁工法であるというだけでなく、<三星バリボード>工法のように、特にフクレ対策用を意図して組まれた部分接着工法を採用することが望ましい。
 押え仕上げの屋上の全面改修に際して押え層を斫る場合、斫り作業に要する手間、斫り作業中のの騒音問題、斫り作業により既存防水層が損傷し発生する漏水の補修、斫ったコンクリートの処理費用など、費用がかさむばかりでなく、付随して発生する諸問題や、工期の長さなどをみても主目的である防水層の改修に要する数倍もの労力、費用、工事日数を要するという大きな欠点がある。押え層はできるだけ斫らずに、その上から行える改修工法を検討する方が賢明である。




シート防水層


防水層が受ける劣化外力は、光、熱、水分、温度、大気中の汚染物質、微生物、などの他に、化学的、物理的、機械的などの種々の劣化外力が作用して、新築竣工後、経日年により劣化は、順次進行する。
 防水層も建築物と同様に、維持管理の目的で定期的に、保全点検や修繕が行われる。そして、ある時点で大規模修繕または更新修繕を行うために、不具合の有無、漏水現象、過去の履歴、修繕などの維持管理を総合的に判断することが重要である。
1.現状の点検調査と判断基準
一次診断により、将来防水層から漏水するかも知れない諸要因として、漏水の原因、雨水の浸入位置、構造など、今後漏水することを想定して、詳細に調査し記録を基に、修繕の時期、予算の規模などの対策を策定するものである。
 二次診断では、防水層に発生している劣化度の程度を判断する基準は、建設省総合技術開発プロジェクト(通称、総プロ)「建築物の耐久性向上技術の開発」において、非構造材料・部材、屋根メンブレン防水層の耐久性に記述されている。
2.シート防水材料の選定
シート防水材料を適用して、防水層の大規模修繕を行う場合の特徴は、更新する改修防水層が軽量化できることと、防水層末端部の雨仕舞いが確実にできること、シート防水層は露出非歩行に適し、カラー仕上げができることである。
 この他シート防水層に断熱材を組み込んだ工法もしばしば適用されており、建物の省エネ効果のほかに、屋根スラブが受ける輻射熱量が少なくなり、屋根にスラブのムーブメントが小さくなるので、安定化にも役立つものである。
 シート防水層の選定に先立ち、既存屋根の現状と防水層の現象を詳細に点検調査して、既応の欠陥が、どのような原因によるものか、何に起因しているか、どの部分に発生しているかを調査して、新設防水層に同じ欠陥が発生しないように、対策すべきである。
 シート防水層の種別と、その適用区分については、建築学会編「建築工事標準仕様書・同解説」防水工事、メンブレン防水工事に標準化されたシート防水層の種別と適用を参考にするか、建築業協会の研究成果である屋根防水層の選定手法やシート防水材製造業者の防水層の改修工事カタログ・仕様書など参考にして、シート防水材料を選定するのが妥当である。

3.施工計画・施工作業
既存屋根防水層の改修工事に際して、建築物の内部を利用しているので、居住者に与える不快感を少なくしなければならない。したがって、騒音、振動を発生する作業を極力少なくするために、斫り作業などは、なるべく回避するように、改修工事を計画する。
 改修工事計画と実施に際しては、居住者のみならず周辺の住民に対しても、工事による換気、煙、火気はもちろんのこと、落下物、飛散物のないように、安全性を充分に確保しなければならない。
 同時に、防水施工作業において、充分な安全性を確保した作業を実施しなければならないので安全教育の徹底化と作業の無理、むだのないことを第1義的に考え、計画し実施しなければならない。
 屋根防水層の改修工事については、シート工連、合成高分子ルーフィング工業会(KRK)共編による「改修工事マニュアル」に既存屋根防水層と、その納まり例が詳述されているので参考にしていただきたい。
 特に既存屋根防水層の改修工事では、新設防水層用の下地調整と、新設防水層の通気工法と脱気装置の選定、既設ルーフドレン回りの処理の検討と技術内容がポイントである。

屋根防水層の改修工事(例)
・改修工事の事例を上の写真によって説明すると次のようである。

・押えコンクリート層表面を下地調整した後、非加硫ゴムシートの一層張り工法

・押えコンクリート層表面を下地調整した後、非加硫ゴムシートの二層張り工法

・PC部材工法の集合住宅屋根に断熱材を組み込んだ、非加硫ゴムシートの断熱防水工法

・瓦棒葺き折板屋根に、非加硫ゴムシートを直下張りした改修防水工法
4.維持管理と保守管理
防水層の改修工事が終了した後、維持管理が必要で少なくとも1年に2回程度の点検調査と、屋根面の清掃、ドレン回りの落葉やゴミの除去を行い排水を促進し、草木の生育を阻止するとともに、鳥害の防止などの維持管理を建築物管理者が行うことが大切であり、チェックシートなどを活用すべきである。
 防水層に異常が認められるときには専門業者の専門知識による診断を行うべきである。

参考文献
1)鶴田 裕:施工 I No,242(1982)





塗膜防水


1.既存屋根防水工法における不具合の見分け方
改修工事における既存屋根防水工法は、大きく4種類に分類され、それぞれ次のような欠陥が多く見られる。

(1)アスファルト防水(押え工法)
●押え層の浮き、亀裂
●パラペット押出し
●伸縮目地、目地材のやせ、せり上がり
●モルタル笠木の浮き、剥落、亀裂
●シーリング材の劣化、剥離

(2)アスファルト防水(露出工法)
●防水層のふくれ
●砂落ちによる防水材の露出、ひび割れ
●端末、接合部の剥離
●立ち上がり部の浮き

(3)シート防水
●防水層のふくれ
●端末、接合部の剥離
●入隅部の浮き
●チョーキング及び表層のひび割れ
●防水層の破断、ひび割れ

(4)塗膜防水
●防水層のふくれ
●チョーキング及び表層のひび割れ
●薄塗りによる防水層の部分的消滅
●硬化不良
●防水層の破断、ひび割れ
2.材料の選定条件及び性能
屋根防水の改修は居住者が入ったまま行わねばならぬため、次の条件を満たす工法が望ましい。

@工事期間中の漏水がないこと
A工期が短期間であること
B騒音、悪臭等公害がないこと

したがって工法的には押え層および既存防水層を斫らず、施工できるものが必要になってくる。しかし、この場合最も注意しなければならないことは、下地に溜まっている含有水分である。下地に直接塗布する通常の塗膜防水工法で改修を行うと、施工後はこの水分を躯体中に完全封じ込めることになる。この水分が気温の上昇と共に蒸気圧となって塗膜防水層を押し上げ、ふくれの原因となることが多い。したがってこの水分を外に排出するシステムが必要になってくる。
 防水性能はもちろんであるが、その他耐荷重の点で軽量であること、歩行、非歩行、スポーツ施設、飛び火対策等、屋上ニーズに対応できる工法が望ましい。
 このような改修工事の要求条件に対して、ウレタン塗膜防水と脱気絶縁シートの複合防水工法が開発されすでに数百万平方メートル以上の実績が残されている。

 以下この方式を例として述べることとする。
 脱気絶縁シートはその屋上の用途に応じ、数種類用意されており、代表的なものは次の通りである。

●DFシート(厚み3mm)
溝つき発泡ポリエチレンシートにウレタンの密着を高める寒冷沙をラミネートしてあり、JASS8の「下張り緩衝材」に該当する。
 軽量で弾力性に優れ、下地の不陸吸収効果及び構造クラックに対する緩衝効果も高い。

●DD・Sシングルシート(厚み2.5mm)
溝つきポリマーアスファルトシートとポリエステル不織布から構成される脱気絶縁シートである。
 丈夫でシート自体の防水効果も高く、特に屋上にスポーツ施設用に適している。

●DD・Sダブルシート(厚み3.5mm)
DD・Sシングルシートをさらに丈夫にしたものでポリエステル不織布が2枚ラミネートされている。屋上テニスクラブ等、専用のスポーツ施設に適している。
 これら機能性の高い脱気絶縁シートと、JIS A6021(屋根防水用塗膜材)に該当するカラーウレタン、「エバーコート」「US−11」を併用することによって既存の痛んだ屋根をそのニーズに応じて再開発することができる。


3.施工作業
改修工事の場合は、現場によって下地処理の方法や納まりが異なるため、事前に充分な打合せを行う必要がある。適切な下地処理納まりの確認を行った後本作業に入る。

(1)プライマー処理
(2)脱気絶縁シート張り及び端末・ジョイント処理
(3)ウレタン塗布工程
(4)トップコート工程
4.改修工事完了後の保守管理について
改修工事完了後は、その防水層を永続させるため充分なメンテナンスが必要である。
 日常のメンテナンスは、施設側で行うことが大切であるが、専門業者による定期的な点検も重要である。そのため当社では現場点検制度によるメンテナンス体制をとっており、定期点検を実行している。
定期点検は、メーカー、施工業者が施工後1,3,5,9年と行い施主に報告するシステムである。これによって屋上の健康診断ができ、改修された屋上の寿命をさらに延ばすことが可能になってくる。





モルタル防水


1.セメントモルタル防水の種類
セメントモルタル防水の仕様は、第1表 1)にも示すものが一般的であり、ポリマーディスパーションを混入するポリマーセメントモルタルと塩化カルシウム・水ガラス・脂肪酸塩(金属せっけん)・パラフィンなどのセメント防水剤を混入する防水モルタルとの組み合わせになっている。ポリマーセメントモルタルの防水効果は、第1図 2)に示すとおりである。
 セメント防水剤の品質を評価する方法としてJIS A1404(建築用セメント防水剤の試験方法)があるが、セメントモルタル防水層の性能評価はむずかしく、また研究報告も極めて少ない。
2.セメントモルタル防水層に発生する不具合
セメントモルタル防水層に発生する不具合は、浮き・ひびわれの二つが代表的である。セメントモルタル防水材は、左官用セメントモルタルと同様に、セメントと砂を主要材料とし、水を加えて硬化させるので、防水層自身の乾燥収縮やコンクリート下地のひびわれ発生により、浮き・ひびわれを発生し易い。
 セメントモルタルの接着性や変形能を高めるために、ポリマーディスパーションが混入されるが、これを用いても防水層の浮き・ひびわれの発生を防止することはむずかしい。
第2図 3)は各種調合のポリマーセメントモルタルの引張応力と伸びとの関係を示したものである。通常のポリマーセメントモルタルの伸びは、最大でも0.1%前後である。したがって、コンクリート下地が0.2〜0.3mm幅のひびわれを発生すれば、防水層は破断する可能性は高い。


3.セメントモルタル防水の補修・改修方法
(1)浮き・ひびわれに対する補修方法
セメントモルタル防水層に発生した浮き・ひびわれは、一般に下記に示す注入工法により補修する。

(i)エポキシ樹脂注入補修工法
セメントモルタル防水層は通常かなり湿潤しているので、注入材料として湿潤面接着型のエポキシ樹脂を用いる。0.3mm以上の間げき厚をもつ浮き・ひびわれに対しては、グリースポンプや足踏み式の注入機械による工法が適用できるが、0.3mm未満の間げき厚をもつ浮きやひびわれに対しては、ゴム風せん状あるいはシリンダ状の特殊な注入治具を用いる自動低圧樹脂注入工法の採用が好ましい。

(ii)ポリマーディスパーション注入補修工法
この工法では、エチレン・耐酸ビニル共重合樹脂やゴムアスファルトのポリマーディスパーションを注入材料として用いる。ただし、材料は乾燥硬化型のため、常時湿潤している箇所への適用はむずかしい。

(iii)水反応ポリウレタン樹脂注入工法
この工法では、水と化学反応するポリウレタン樹脂を注入材料として用いる。ただし、この種の材料は耐アルカリ性に難があることと、水との反応により発泡膨張するので、使用に際しては充分な注意が必要である。

(iv)ポリマーセメントスラリー注入工法
これはスチレン・ブタジエン系合成ゴムなどのポリマーディスパーションを混入したポリマーセメントスラリーを注入する工法であり、1.0mm以上の間げき厚を持つ浮きやひびの補修に適用される。

(2)塗膜防水による改修工法
既存のセメントモルタル防水層を注入工法により補修した後に、塗膜防水が施されることが多い。ただし、塗膜防水材料・工法の選定に当たっては、@一般に密閉空間での施工のため、有機溶剤を用いない安全性の高い材料・工法である。およびA下地が湿潤していることが多いので、湿潤下地と良好に接着する材料・工法であることの二つの用件を考慮する必要がある。これらを満足できるものとして、下記に示す材料・工法が挙げられる。

(i)エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂やアクリル樹脂あるいはゴムアスファルトと無機水硬性材料から成るポリマーリッチなポリマーセメント系材料を用いる塗膜防水工法。

(ii)エポキシ樹脂系材料を用いる塗膜防水工法
第2表の仕様が示すとおり、この工法では、防水材料としては、柔軟性を有するエポキシ樹脂の使用が好ましい。また埋め込み金物等の取合い部においては、補強材を挿入する必要がる。湿潤下地との接着一体化を高めるためには、エポキシ樹脂エマルションを混入するポリマーセメント系下塗材の介在は有効である 4)
4.リフォーム実施後の保守管理
リフォーム実施後に、定期的に点検する必要がある。セメントモルタル防水層のひびわれに対しては、目視により点検する。浮きに対しては、テストハンマーを用いて打音により浮き発生の有無を確認する。
 塗膜防水材のふくれ・破断に対しては、目視により点検する。ふくれ・破断が発生した場合には、その欠陥箇所周辺と塗膜防止層を除去し、再度、同質の塗膜防水層を施す。


参考文献
1)JASS8(防水工事)、日本建築学会

2)青山幹、林好正:特殊合成ゴムラテックス混入セメント複合材に関する研究(その1)大林組技術研究所報、No.24 1982

3)青山幹他:外装タイル張り仕上げの剥離防止技術を考える(3.モルタルボンド)、リフォーム、1985年8月

4)青山幹他:背面水圧下でも内防水の施工法に関する研究、大林組技術研究所報、No.31,1985





シーリング


1.シーリング材の故障の種類とその原因
シーリング材の故障には、防水機能を損う故障と防水上は問題はないが目地や目地周辺が汚れて美観を損う故障とがある。防水機能が損われる故障を形態的に見るとシーリング材の接着破壊(はく離)、凝集破壊(われ)、被着体破壊がその主たるものであり、前述後者は、シーリング材により目地や目地周辺が汚染された場合である。
 これらのこれらの故障は工事中に発生するものから、竣工後早期(半年〜2年後位)に発生するもの、あるいは、それ以後の経年的な劣化や疲労によって生じるものがあり一様でない。また故障の原因はシーリング工事の施工やシーリング材および設計上の諸条件が深くかかわっているが、故障の形態や発生時期から見ると、それが施工上の問題か、材料設計上なのかの原因系の推定ができる。(
第1表)またこれらをふまえてシーリング材に関する故障を特性要因図で示したのが第1図である。次に故障の代表的な形態について述べる。


(1)接着破壊
シーリング材が接着面からはく離する現象を言う。(第2図)故障の形態の中では、最も多い例であると言える。故障はシーリング工事後比較的早い時期に発生する場合が多い。その原因は、プライマーを塗布しなかったり。プライマーの選定を誤った場合や、被着面の未乾燥状態での施工や清掃不良などの施工不良が主たるものである。金属面の表面塗装材も一緒にはがれる場合があるが、これは後述の被着体破壊の一種である。
 他方経年後に生ずる被着破壊の場合は、シーリング材に働くムーブメントによる接着面の疲労や、紫外線などによる接着界面の劣化(特にガラス回りのシーリング材など)がその主たる原因と思われる。

(2)凝集破壊
シーリング材自体が破断して、口開きの状態になった現象を言う(第2図)。この故障は、ムーブメントの大きい目地や、接着面に比して著しくシーリング材の厚みが少ないとき発生している。この故障の原因は次のとおりであると考えられてる。

@目地に発生するムーブメントを過小評価して目地を設定した。
Aシーリング材の設計伸縮率を過大評価して、シーリング材を選定した。
Bシーリング材の硬化過程でムーブメントを受けたとき。

 これらは、特にカーテンウォールのシーリング材に見られる凝集破壊の原因である。
C所定の断面形状どおりにシーリング材が充填されなかったとき。
 このときはムーブメントに関係なく凝集破壊が見られる。

(3)被着体破壊
シーリング材が被着面の部材を破壊する場合を言う(第2図)。ALC板や、PC板・コンクリート等の欠損部の補修モルタルの破壊にその例が多く見られる。また金属塗装塗膜の破壊もこの一例である。これはシーリング材の引張応力が、被着面のそれを上まわるときに発生する。ALC板等のように表面の強度が比較的小さな部材の場合は、シーリング材の選定に原因がある。また、シーリング材の経年劣化による伸び率の低下なども原因の一つである。塗装面については、養生期間の不足がその原因である。

(4)目地・目地周辺の汚染
目地や目地周辺の汚れがひどく、それが美観を損なうときは、故障として補修の対象になる。かつてはシーリング材中の樹脂などによる目地周辺の汚れが(ポリサルファイドのフェノール樹脂による呈色や油性のコーキング材の油性分への塵埃の付着など)、材料の改良につれて昨今はほとんど見られない。
 近年はシリコーンシーリング材による目地周辺の汚れが大きな問題になっている。とくに石材やセラミックタイルなど外装材やPC板、明色のアルミカーテンウォールの目地周辺の汚れが問題になる。この汚れの原因はシリコーンシーリング材中の未反応シリコーンオイルが雨水で拡散し、そこに塵埃が付着して汚れるものと考えられている。
 この対策として、シーリング材充填後汚染防止プライマーを塗布して防止をはかったり、また汚染した部分を特殊な洗剤で洗浄したりする方法がいろいろ採られているが、抜本的な解決策になっていないのが現状である。本稿では詳細を省略する。
2.故障の調査・診断
シーリング材の劣化現象や故障実態を、調べるためには建物を実際に調査しなければならない。調査は、漏水やその痕跡、被着面からの剥離、凝集破壊(口開き)、被着体の破損、シーリング材の変形、軟化、その他表面のしわ、変色、ひびわれ、チョーキングなどを内容とする。これらの現象が多く見られるときは、劣化の程度が大きいので、補修の必要度、緊急度は高い。また、この劣化の程度を定量的に示すため、シーリング材の物性を調べる必要もある。
 調査はまず、建物のうち容易に調べることのできる部位(開き窓、屋上笠木、1階部分)を目視の指触観察で行う(一時調査・診断)。これらの調査範囲を広げ目視、指触観察をする(2次調査・診断)。目地幅や部材の形状などを併せて調べる。この結果リーシング材の凝集破壊やはく離等が見られるときは、建物全体にわたって、ゴンドラや足場を使って目視・指触観察する。このとき併せてシーリング材を切り取り採取する。採取したシーリング材は、物性試験を行い、劣化の程度を調べる(三次調査、診断)。
このような調査によって、故障の形態、劣化の程度や、それらの頻度・分布が明らかになってくるわけである。
 また建物が10年以上経過している時は、直接上述の三次調査・診断を敢行する必要がある。なおこれらシーリング材についての劣化を診断する方法や基準については、建設省総合技術開発プロジェクト「建築物の耐久性向上技術開発」の中に収められている「シーリング防水の劣化診断指針」を参照されたい。



3.補修の施工法
故障したシーリング材を補修する方法には、既存のシーリング材を撤去し、新しくシーリング材を充填する打替工法と、目地の構成部材の双方に橋を架けるように、新しいシーリング材を盛り上げて充填施工する橋架け工法(第3図)がある。打替工法は元どおりに補修復元できるが、橋架け工法は、もとの目地幅より広くなりかつ充填厚さ分だけシーリング材が帯状に浮き出てくる。以下に各法について述べる。

(1)打替工法
打替工法には、既存のシーリング材を撤去し再充填する方法と、撤去と同時に目地を拡幅後再充填する方法(第4図)がある。便宜上前者を撤去打替工法、後者を拡幅打替工法と呼ぶ。

@撤去打替工法
シーリング材が単純な劣化による凝集破壊を起こしたときや施工不良・劣化等による接着破壊と推定される故障の場合には、既存シーリング材を撤去後、同種のシーリング材を用いて補修する。耐久性の向上を図るためによりグレードの高いシーリング材を充填することも多い。プライマー不適合や劣化による接着破壊のときは、プライマーを変える。また施工不良と思われるときは、被着面の清掃方法をかえて、再充填する。

A拡幅打替工法
接着面にシーリング材の接着を阻害する因子が存在するときに、目地幅・深さを広げてシーリング材の接着効果や耐久性を高めるために採る方法である。油性のコーキング材が充填してあるコンクリートの目地などの補修にこの方法が多く採用されている。

(2)橋架け工法
目地の形状不備や設計伸縮率以上のムーブメントが原因と思われる業種破壊の場合や、被着体の強度不足あるいは目地形状不備による被着体破壊と思われる場合の補修にこの方法が採られる。
 これらの場合は、打替工法で補修してもまた同じ故障の繰り返しが予想されるからである。この工法は、上記の場合などにとくに有効な工法であるが、先に述べたように外壁のデザインイメージを損うことがあり、それがこの工法の欠点である。
 これらの補修工法や補修工法や補修の納りのいずれを採用するかについては、目地のムーブメント量とシーリング材の設計伸縮率の検討及びそれに基づくシーリング材の選定あるいは、各工法による補修目地納まりと美観、補修用シーリング材の接着性や汚染性の検討、そして経済性などを幅広く検討を考慮して、要否を決めなければならない。
4.補修用シーリング材の選定について
補修用シーリング材は、少なくともかつて充填してあったシーリング材に比較して、それ以上の耐久性、接着性、非汚染性などの性能を有するものを選ばなければならない、とくに故障原因がシーリング材(プライマーも含む)や設計条件にあると考えられるときは、要求性能の検討を十二分に検討しなければならない。このような意味でシーリング材の選定を示したものが第5図のフローである(注1)。なお品質面では、JIS A5758の規定をクリヤーするものではなくてはならい。


5.シーリング材の維持・保全
シーリング材は、紫外線やオゾン・熱・ムーブメントにより経時的に劣化・性能低下する。これらを排除することは、実際上できないし、清掃などによっても性能維持・向上をはかることはできない。しかし、定期的な点検をすることによりシーリング材の劣化の進行を調べ、未然に故障発生防止処置をとることは可能である。シーリング材の保全とはこのような計画の立案・実施による故障の未然防止であり、シーリング材のライフサイクルを考える上で、今後は欠く事のできない重要な問題である。
6.故障の補修事例
上掲の図によっていくつかの例を示したので参照願いたい(注2)


参考文献
注1)小野正「シールエージ」478号

注2)日本シーリング工業会「シーリング防水施工法」



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